視野コントロールフィルムは視野コントロール機能を有する「ルーバー層」部と、保護を目的とした「高透明フィルム」部で構成されています。 ルーバー層部には透明層と遮光層が交互に配置されていて、ブラインドに似た構造になっています。
- シリコーンゴムを使用
透明層と遮光層にはシリコーンゴムを使用しています。シリコーンゴムの結晶化温度は-40℃付近にあって、常温ではゴム弾性を有し、耐環境性、光学特性ともに優れています。また、視野コントロールフィルムに柔軟性を付加することができます。 柔軟性を有することの効果は以下の2点です。
1. 平滑性
2.湾曲部への設置(湾局面への追従性)
さらにシリコーンゴムの屈折率は「1.43」と低屈折率であるため薄層化が可能となりました。
- ルーバー層の低剛性
ルーバー層自体の低剛性による良加工性により、ルーバー層の寸法が安定し、視野コントロールフィルムとして良好な平滑性及び最大透過率角度を含む安定した視野角特性を実現できます。
視野角とルーバー仕様の関係
ルーバー層 |
遮光層 |
視野角 |
模式図 |
---|
基準 |
基準 |
基準 |
厚い |
基準 |
狭い |
薄い |
基準 |
広い |
基準 |
細かい |
狭い |
基準 |
粗い |
広い |
当社の設計手法としてカットオフ値を設けず、視野範囲外の透過率がほぼ「ゼロ」となるような設定を行っています。VC-FILM標準仕様3タイプ(視野角60°90°120°)を基準とし、ルーバー層厚みと遮光層ピッチを表のように調整することにより、目的の視野角を得ることが可能になります。
- 貼り付けタイプ
貼り付けタイプは、視野コントロールフィルムの表面に粘着層を設け、液晶ディスプレイへの組み込み時に、他部材と貼り合わせて空気層を排除し、屈折率が大きく変動し反射が起こる界面を減らす事により高輝度を得ます。
粘着層は下図の2つの仕様が対応可能です。(a)は高輝度化の効果がより大きく、(b)は粘着力が大きくなります。貼り合わせによる輝度上昇効果は条件によっても異なりますが、10%程度です。
- 光学等方タイプ
光学等方特性は、視野コントロールフィルムを直線偏光環境下で使用する場合に求められます。
表面に配置される高透明フィルムも、レターデーション管理したポリカーボネートを、ルーバー層に対し表裏で遅相軸を90°捻った位置関係で貼り合わせることにより、ポリカーボネートのレターデーションをキャンセルし、VCF光学等方タイプとしての低レターデーションを達成しています。その実測値は10nm以下であり、ほぼ無視できるレベルと考えられます。
- クロスルーバータイプ
左右あるいは上下の2方向への覗き見防止のみならず、「上下左右の4方向」あるいは「上左右の3方向」の覗き見防止機能が求められる場合があります。上下左右の4方向の覗き見防止機能には、上の図のような2枚のルーバー層を90°交差させて対応することが一般的です。上方向からの覗き見防止効果を維持したまま、上下方向覗き見防止用ルーバー層の遮光層を手前に傾ける(下図参照)ことにより上左右3方向に対する覗き見防止機能が発現します。
- 薄型化タイプ
視野コントロールフィルムの視野角はピッチとルーバー層の厚みにより決定します。よってピッチを細かくすることにより、視野角を変えずにルーバー層の薄型化が可能となります。また、表面の高透明フィルムについても薄型ポリエステルフィルムが選択可能です。これらを組み合わせることにより、標準仕様より2/3~1/2程度の薄型化が可能となります。
- 貼り付き防止処理(ニュートンリング対策)
VC-FILMをアプリケーションに内蔵するケースで、他部材とのクリアランスが少ない場合、貼り付きによる輝度ムラやニュートンリングが発生してしまう場合があります。この対策として高透明フィルムの粗面化を行っています。用途に合わせたHAZE値のコントロールが可能ですが、使用環境に合わせた効果の有無を確認する必要があります。HAZE値が高くなると干渉縞が確認しにくくなる効果が知らされているため、貼り付き防止処理は、干渉縞対策としても有用です。
- AR・AG・ハードコート
VC-FILMの表面に使用している高透明フィルムの表面処理として、以下のものが選択できます。
1. AG+ハードコート
2. AR+ハードコート
3. AR+AG+AS+ハードコート
今後とも、液晶ディスプレイには「覗き見防止」と「光の射出方向の制御」が求められるケースが増えると思われます。VC-FILMの更なる高機能化を目指し、市場のニーズに貢献していきたいと考えています。